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本屋サークル 2018 7月の栞

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久しぶりです。入学してから早くも2年が経ってしまいました。時間の進む早さにはとても驚いています。年を重ねるごとに時が経つのが早く感じると聞いていましたが、それを実感するようになった今日この頃です。

新入生の皆さんも入学して3か月になりますね。慣れない土地での生活や大学にもそろそろ馴染んで目一杯楽しめる時期だと思います。もう少しでテストも始まりますので勉強にも力を入れ始めたいですね。そういうわけで今回は、誰でも手軽に読める小説をご紹介します。

サクラ咲く

辻村深月

sakurasaku.jpg辻村深月さんと言えば、少し前になりますが、本屋大賞を受賞しましたね。『孤城の城』、ストーリーはもちろんですが、キャラクターも1人1人魅力があります。何よりファンタジーながらも緻密に構成されていて、矛盾なくきちんとつながりがわかるような伏線回収がとても楽しかったです。 話が脱線してしまいました。辻村さんの作品は、重い独特の世界観から展開されるイメージが強いですが、今回紹介する『サクラ咲く』はスタンダードで爽やかな話で構成されています。物語の主人公と言えばきらきらして明るく素直な人が多いのかなと思います(もちろんそんなことない主人公もたくさんいますが)。短編で主人公が変わりますが、最も印象に残っている最後の話の男の子は目立たない映画好きな子です。目立たないけれど、決して暗いわけではなく平均的な子という感じですかね。そんな男の子が映画の主役にして撮りたいと思ったのが、人気があり有名な先輩でした。ところが先輩は最近になって、周囲と距離をとるようになり1人で図書館にいるため「図書館の君」と呼ばれるようになっていました。 人から見ると何にも悩みがなさそうで満たされている人でも、実際には見かけとは違い、悩み葛藤するような過去があり、もがいているんだなあと改めて思います。コミュニティに所属するとどうしても位置づけができてしまい、中心の人ばかりが充実して楽しそうに見えてしまいます。でも、実際には誰も見てなくても自分たちの世界があって、誰にも侵せない領域を持つのだと感じました。短編集ですが、個々の話にそれぞれつながりがありそこに注目するのも楽しみ方の1つです。心が温まって優しい気持ちになりたいときにまた読みたいと思える1冊です。                            (文学部2回・かな)


スイート・ホーム

原田マハ

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まるでおとぎ話の世界の扉がそこにあるかのような背表紙に目が止まった。心で反復するだけで心地良いこの7文字。書棚に手を伸ばし、上製本の重みと固さ手に感じながら表紙に目を移す。飛び込んできたのは、そう、今にも甘い香りで私を包み込まんとする大きくて素敵なホールケーキだ。

 「春になれば、バスの窓からやわらかな日が差し込みます。きらきら、街全体が、淡い光に包まれています。初夏ならば、いっぱいの新緑が通りを輝かせています。この季節には、車窓を開けて、深呼吸したくなります。秋には、うつくしく色づくケヤキ並木が目を楽しませてくれます。そして冬、ひんやりと研ぎすまされた空気が頬に心地いいんです。」

 読み初めてすぐに心が擽られた、この繊細で美しい自然、風景の描写。この小説の中で何度も季節や視点によって表現を変えながら、丁寧に描かれ続けるこの小説の舞台は、兵庫県の宝塚市にあるスイート・ホームという小さな洋菓子店。登場人物が話す関西弁は訛りが強いのに、それらは全て人柄通りに温かく、優しく、心地良い。午後の暖かな日射しの中ゆっくりと時がすぎていくように、ケーキが口の中でとろけるように、すーっと入ってくる。

 日常に"潜む"とも言われる幸せが五感を通してこんなにもたくさんの素敵な言葉で表現された小説に出会えたことに私はとても嬉しく思う。読み終えて本を閉じ、本の表紙を見返したとき、何層からもなる大きなホールケーキを見たあなたは何を感じるだろうか。

「スイート・ホーム」は原田マハさんの作品の中でもとても読みやすい作品。日常をまっすぐに描いたこの作品を是非多くの方に読んで頂きたい。

 最後に、短編集ということにこだわらずに、「スイート・ホーム」のように心温まる作品で表紙も素敵な、私が大切にしている本を二冊紹介したい。「うさぎパン」と「太陽のパスタ、豆のスープ」だ。こちらも是非。食べ物ばかりになったのは偶然か、...。

(法学部1回・さくら)

白夜/おかしな人間の夢

ドストエフスキー

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今回私が紹介する本はドストエフスキーの短編集『白夜/おかしな人間の夢』である。ドストエフスキーと言えば『カラマーゾフの兄弟』や『地下室の手記』などの長編小説の世界的な巨匠として知られていがその彼の短編集を今回選んだ。この本を読んだのは今年の2月ごろだった。私はその時非常に将来や自分自身のことに対して大きな不安を抱いていた。その時に、この本を実家で雪景色を見ながら読んで、より病んでしまったという個人的に変な思い出がある作品だ。題名にある白夜はとても妄想好きの主人公が白夜の夜に偶然出会った少女との恋を描いた作品である。私もこの主人公と同様に変に想像好きなところがあるので少女に翻弄される主人公の姿を読んでいて悲しくなってしまった。おかしな人間の夢は40ページほどのとても短い作品であるが、ドストエフスキーの思想がとても反映された重厚感のある作品であった。ドストエフスキーは生前、革命直前のロシアにて世界の近代化と帝国主義の波に大きな絶望を抱えていた。その中でキリストの教えの尊さを訴え続けた彼の思いがこの作品の主人公の気持ちの変化に現れているところが見どころである。ぜひロシア文学に興味はあるが何から読んだらいいかわからない、海外小説の短編集が読みたいという方はこの本を一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

(文学部3回 ワタリガニ)



愛の夢とか

川上未映子

川上未映子さんにはどんなイメージを持つでしょうか。もちろん、小説家、詩人でもあります、ミュージシャンもしてます。そうして、よくよく編集者さんを困らせているお話もかで読んだかもしれません。わたしの中で川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』は過熱済恋愛小説部門では単独いちばんで、何度読み返しても鮮やかに心に焼き付いて夜も寝られなくなるほどです。そんな眠れない夜にぴったりなのが、この短編集『愛の夢とか』。西加奈子さんといい、川上さんといい、長編小説も書ける方の短編でどこか不完全なところがあって、でもそれって   何度も何度も繰り返し読んだり、似たような経験をしたりする中で、徐々に完成形に近づいてく感覚があるんです。 感情が繁茂する日々で、どうしてもそういう方法で孵化をさせられないとき、眠る前に読めば、巷で話題の「睡眠時の記憶整理」とか何やらで、出産が早くなるかもしれませんね、と思いながら、わたしは枕元でこの短編を開きました。
いつごろ実は熟れるのでしょうか、まだまだ発芽さえしていませんが、この短編集を読んでくださった方で啓蟄をむかえた方がいらっしゃいましたらご一報ください。あきれるほどたくさんのコーヒーを飲みながら、眠りにつくまで喋り続けましょう。

宵山万華鏡

森見登美彦

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本棚に刺さっている『宵山万華鏡』は三冊目だ。わたしは人生で2回『宵山万華鏡』を失くした多分唯一の同志社大学生。 一冊目は憧憬の『宵山万華鏡』。森見さんの韜晦的な文章で描かれる色鮮やかな祇園祭と、それをすっぽりおさめる京都のまっすぐな道々に夢を抱いて、わたしに京都の大学を受験することを決めさせた。二冊目は傲慢の『宵山万華鏡』。その突飛で目まぐるしい情景描写にも打ち殺されず、鍛えあげた読解力で脳内に宵山を繰り広げるわたしって相当な国語力の持ち主ではないだろうか、と思いあがらせた。三冊目は失望の『宵山万華鏡』晴れて京都に来て、初めての夏と初めての祇園祭。どうして失望なのかはさておいても、歴代三冊とも、こんなに祇園祭を幻想的に描ける作家さんは森見さんをおいて他にはいないんじゃなかろうか、と思わせる。短編でありながら、絶対に理解ができない宵山の複雑な構造、人間の感情、そういったものがすべて詰め込まれている作品集だ。

また本棚から『宵山万華鏡』が消えている。今年の宵山が始まる前に四冊目を買いにいかなきゃな。

(文学部3回・はる)

すいかの匂い

江國香織

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「スイカの匂い」という言葉を聞くだけで多くの人が夏に食べるあの瑞々しい果実の匂いを自然と思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。次に、幼い頃の夏の思い出を思い出してみてください。きっと、感覚でしか語れず、上手く言葉に表すことのできる人は少ないでしょう。僕自身、そういうことが多いです。そんな時、僕はこの小説を読みたくなるのです。そうです。この「スイカの匂い」という小説は短い11の話から成るのですが、全ての話が現実離れしていて、それなのに、どこか懐かしい気分になれるのです。1ページ、どこでも良いです。適当に開いてください。1文でも良いです。適当に読んでみてください。それだけできっと幼い頃の、あの言葉に出来ないような感覚を再び味わえることでしょう。

(法学部3回・シホ)

 本屋サークルの活動の一つとして、同志社生協の機関紙「東と西と」にも、毎回オススメの本を紹介しています。
 本好きが集まる本屋サークルは学部を問わずいろんな人が集まっています。伊坂幸太郎、森見登美彦、太宰治など流行の作家から古典的な作家まで会員の好きな作家は多岐に渡ります。主な活動は昼休みに行い、飲み会や合宿などイベントも盛りだくさんです。会員同士で本の貸し借りもしたりします。

 本好きな仲間がほしい、いろんな本が読みたい、どんな理由でも本屋サークルは入会できます。気になったらぜひご連絡ください。

連絡先:
森 優奈(文学部 2年次生)
cgcb5048@mail2.doshisha.ac.jp